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5つのマインドフルネス・トレーニング(2022年7月改訳)
この実践(じっせん)は仏教的視点から地球大の精神性と倫理観(りんりかん)を表し、私たちと世界に癒(いや)しと変容(へんよう)と幸福をもたらすためにブッダが説(と)いた、四つの尊い真実、八つの聖なる道、真の慈(いつく)しみと正しい理解の道について、具体的に解釈(かいしゃく)したものです。
この五つの実践では、相互存在(そうごそんざい)を洞察(どうさつ)する眼 ーー 対象を正しく見る力を養い、あらゆる差別、心の狭さ、怒り、怖れ、絶望を取りのぞいていきます。
これに従って生きるとき、私たちはすでに菩薩(ぼさつ)の道を歩んでいます。
この道を歩む自覚があれば、混乱(こんらん)せずに今を生き、未来の怖れに支配されることはなくなります。
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01
いのちを敬う
いのちを破壊(はかい)することから生まれる苦しみに気づき、相互存在(そうごそんざい)を洞察(どうさつ)する眼と慈悲(じひ)を養い、人間、動物、植物、鉱物(こうぶつ)のいのちを守る方法を学びます。
自分の考えかたや生きかたにおいて、自ら殺さず、人にも殺させず、世界のいかなる殺害行為も支持しません。
怒り、怖れ、貪(むさぼ)り、不寛容(ふかんよう)などのいのちを害する行為は、差別や二元的思考(にげんてきしこう)から生まれることを知り、寛容(かんよう)と差別のない心を育てます。
そして心の中と世界に存在する、暴力、狂信(きょうしん)、教条主義(きょうじょうしゅぎ)を変えていきます。
02
真の幸福
搾取(さくしゅ)、社会的不正義、略奪(りゃくだつ)、抑圧(よくあつ)による苦しみに気づき、心、言葉、行動によって寛容(かんよう)の実践をします。
けっして盗まず、他に属するものを我がものとせず、自分の時間、エネルギー、持ちものを、必要とする人とわかち合います。
深く見つめる実践を通して、他の幸福と苦しみは私の幸福と苦しみと異ならないこと、理解と慈悲(じひ)なしに真の幸福はありえないこと、富、名声、権力や享楽(きょうらく)の追及(ついきゅう)は大きな苦しみと絶望につながりうることを理解します。
幸福は外的(がいてき)な条件ではなく、心の持ち方によって決まるものであり、自分が幸福のための条件をすでにじゅうぶん持っていることを思い出せば、今ここで幸せになることができます。
地球に生きるものたちの苦しみを減らし、気候変動(きこうへんどう)に加担(かたん)しないよう、自ら正しい暮らし方を実践します。
03
真の愛
性的な過(あやま)ちによる苦しみに気づき、責任感を育て、個人、カップル、家族、社会の安全と誠実さを守るすべを学びます。
性欲(せいよく)は愛と異なるものであり、貪(むさぼ)りによる性行為は、つねに自分と相手を傷つけることを自覚します。
お互いの合意(ごうい)と、真の愛、深く長期的な交際(こうさい)なしには、性的な関係を結びません。家族、友、支えと信頼の場であるサンガに、誠実な関係性への精神的な援助(えんじょ)を求めます。
また、子どもたちを性的虐待(ぎゃくたい)から守り、カップルや家族の関係が性的過(あやま)ちによって破(は)たんしないように最善を尽くします。
心と体が深くかかわりあっていることを知り、私と他者のさらなる幸福のために、自分の性的なエネルギーの適切な扱(あつか)いかたを学び、真の愛の四つの基本要素ーー慈(いつく)しみ、思いやり、喜び、平等(包容ほうよう)心を育てます。
人の経験の多様性(たようせい)を受け入れ、どのような性自認(せいじにん)や性的志向(せいてきしこう)についても差別しません。
真の愛を実践すれば、それがすばらしい未来につながっていくと信じます。
04
愛をこめて話し、深く聴く
気づきを欠(か)いた話し方と、人に耳を傾(かたむ)けられないことが生む苦しみに気づき、愛をこめて話し、慈悲(じひ)をもって聴(き)く力を育てます。
それによって自分をはじめ、他の人びと、民族や宗教や国家間の苦しみを和らげ、和解(わかい)と平和をうながしていきます。
言葉によって、幸せや苦しみが生まれうることを自覚し、信頼、喜び、希望を与える言葉を使い、誠実に話します。
心に怒りが残っているうちはけっして話しません。マインドフルな呼吸と歩く瞑想(めいそう)を実践し、その怒りに気づき、深く見つめます。
怒りは、私自身の認識の誤(あやま)りと、自分と相手の苦しみに対する理解の欠如(けつじょ)から生まれることがあると認めます。
自分と相手が苦しみを変容(へんよう)させ、困難な状況から抜け出せるような話し方、聴き方をします。
確かでない情報を広めることをせず、分裂(ぶんれつ)や不和(ふわ)を引き起こす言葉を発しません。
正しい努力を実践して、理解、愛、喜び、平等(包容ほうよう)心を養う力を育て、意識の奥深くにひそむ怒り、暴力、怖れを少しずつ変容(へんよう)させていきます。
05
心と体の健康と癒し
気づきを欠(か)いた消費から生まれる苦しみに気づき、マインドフルに食べ、飲み、消費する実践によって、自分と家族と社会における心と体の健康を育てます。
また、食べもの、刺激(しげき)による反応、意思、意識状態という四種の栄養の取り入れ方を深く見つめる実践をします。
賭(か)けごとをせず、アルコール飲料、麻薬(まやく)だけでなく、特定のウェブサイトから、ゲーム類、テレビ番組、映画、雑誌、書籍(しょせき)、会話にいたるまで、毒性(どくせい)のあるものは摂取(せっしゅ)しません。
今ここに戻る実践に努(つと)め、自分自身と周囲に存在する、回復と癒(いや)しと滋養(じよう)をもたらす要素に触れます。
そして、後悔(こうかい)や悲しみによって過去に引き戻されたり、不安や怖れや貪(むさぼ)りによって今ここから引き離されたりすることがないように気をつけます。
消費に没頭(ぼっとう)することで、孤独や不安や様々な苦しみをごまかそうとしません。
相互存在(そうごそんざい)の真理を深く見つめ、自分の体と意識だけでなく、家族や社会や地球という集合的な体と意識に、安らぎと喜びと健(すこ)やかさを保(たも)つような消費に努めます。
徳間書店「ティク・ナット・ハンの幸せの瞑想」より