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ティク・ナット・ハン師とは
世界で最も良く知られ、最も尊敬されている禅師の一人で、詩人であり、平和・人権活動家でもあるティク・ナット・ハン(弟子たちからはタイと呼ばれている)は、尋常でない人生を送ってきた人である。
1926年ベトナム中部に生まれ、16歳で仏道に入ったが、ベトナム戦争は僧侶たちに瞑想の生活に徹し、修行僧として僧院にとどまり瞑想を続けるか、それとも爆撃やその他の戦争被害に苦しむ村人たちを助けるか、選択することを迫った。
ティク・ナット・ハンはどちらか一つではなく、「行動する仏教」運動を設立することで、両方の道を進むことを選択した一人である。その時以来、彼は個人と社会のための内面からの変革という仕事にその人生を捧げてきている。
1960年代初期、ティク・ナット・ハンは爆撃を受けた村の再建、学校や医療施設の建設、ホームレスとなった家族の移住支援、農業協同組合の設立などを行う草の根からの救済組織である青少年社会奉仕校をサイゴンに創設した。
一万人ほどの学生ボランティアを招集し、青少年社会福祉校は非暴力と思いやりという仏教の二つの教えに基づいてその活動を行った。
またティク・ナット・ハンは、自らの活動に対する政府からの警告にもかかわらず、仏教大学、出版社、そしてベトナムにおいて広い影響力をもつ平和運動雑誌も創設した。
1966年、平和使節団としてアメリカとヨーロッパを訪ねたが、そのためティク・ナット・ハンはベトナムに帰ることが禁止されることとなった。
その後のアメリカ訪問では、連邦政府や防衛長官ロバート・マクナマラを含む国防総省の官僚に平和への訴えを行った。
マーティン・ルーサー・キング牧師にベトナム戦争を反対するよう説得し、広がりつつあった平和運動に刺激を与えたという意味では、ティク・ナット・ハンはアメリカの歴史の方向を変えた人物だと言うこともできる。
その翌年、キング牧師はティク・ナット・ハンをノーベル平和賞に指名した。その後、ティク・ナット・ハンはパリ和平会談に仏教徒使節団を率いて参加している。
1982年、ティク・ナット・ハンはフランスで亡命中の仏教徒のコミュニティーとしてプラム・ビレッジを設立し、そこでベトナムや第三世界の難民、小舟で国外脱出を試みるボート避難民、政治的囚人、飢えに苦しむ家族、といった人たちの苦しみを和らげるための活動を続けている。
雑誌も創設した。
彼はまた、ベトナム戦争に参加した旧軍人のための奉仕活動、瞑想のためのリトリート、さらに瞑想、マインドフルネス、平和に関する数多くの著作で知られている。ティク・ナット・ハンが出版した詩、散文、祈祷などについての一般読者向けの著作は85冊にも及び、40冊以上は英語で書かれたものである。
その中には、『私を本当の名で呼んで』、『一歩一歩が平和』、『平和であること』、『平和に触れる』、『生きた仏陀・生きたキリスト』、『愛について』、『解放への道』、『怒り』といったベストセラーが含まれている。
2001年9月、ワールド・トレード・センターへのテロリストによる自爆攻撃のあったほんの2、3日後には、ティク・ナット・ハンはニューヨーク市のリバーサイド教会で非暴力と赦免についての記憶すべき講演を行った。
2003年9月には、アメリカの国会議員たちを対象に2日間のリトリートを行っている。
ティク・ナット・ハンは現在も彼が設立した瞑想コミュニティーであるプラム・ビレッジに住み、法話、著作、庭仕事を続けている。そして世界の各地で「マインドフルな生活法」についてのリトリートの指導にあたっている。
ティク・ナット・ハンの教えの核心は、マインドフルネスの実践を通して、私たちは過去や未来ではなく、今現在に生きることを学べるということである。彼の教えによれば、今現在を生きることこそ、自らの中に、また世界において平和を育む唯一の道なのである。
※ティク・ナット・ハン師は2014年11月に脳内出血で倒れ、一時重篤と伝えられたが、その後奇跡的な回復を見せ、2015年4月に退院。サンフランシスコの専門医療機関でリハビリの集中プログラムを受けたのち、プラムヴィレッジに帰還。その後タイランドでの療養を経て、2018年10月末にベトナムへ永住帰国を果たした。自身が出家をしたフエの寺院でおだやかな日々を過ごしたのち、2022年1月22日遷化(逝去)。
★ティク・ナット・ハン ドキュメンタリー「ひとひらの雲は決して死なず」はこちら 日本語字幕をONにしてご覧ください★
記載内容は「微笑みの風:ティク・ナット・ハン マインドフルネスの教え」より転載
◆著作一覧
『怖れ ~心の嵐を乗り越える方法』徳間書店 2022
『和解―インナーチャイルドの癒し方』徳間書店 2022
『ティク・ナット・ハンの幸せの瞑想』徳間書店 2022
『沈黙 雑音まみれの世界のなかの静寂のちから』春秋社 2021
『ティク・ナット・ハン詩集 私を本当の名前で呼んでください』野草社 2019
『私と世界を幸福で満たす食べ方・生き方』サンガ 2018
『ティク・ナット・ハンの般若心経』野草社 2018
『生けるブッダ、生けるキリスト 新版』春秋社 2017
『愛する―ティク・ナット・ハンの本物の愛を育むレッスン』河出出版 2017
『今このとき、すばらしいこのとき Present Moment Wonderful Moment
―毎日が輝くマインドフルネスのことば―』サンガ 2017
『イエスとブッダ いのちに帰る』春秋社 2016
『和解―インナーチャイルドを癒す』サンガ 2016
『ブッダの〈今を生きる〉瞑想』新泉社 2016
『怖れ ~心の嵐を乗り越える深い智慧』サンガ 2015
『ブッダが教える「生きる力」の育て方
子どもとできるマインドフルネス瞑想』 角川学芸出版 2015
『大地に触れる瞑想―マインドフルネスを生きるための46のメソッド』新泉社 2015
『リトリート ブッダの瞑想の実践』野草社 2014
『<気づき>の奇跡 暮しの中の瞑想入門』春秋社 2014
『ブッダ「愛」の瞑想 人間関係がうまくいく<気づき>の瞑想法』角川学芸出版 2014
『ブッダの幸せの瞑想 マインドフルネスを生きる』サンガ 2013
『ブッダの<呼吸>の瞑想』野草社 2012
『味わう生き方』木楽舎 2011
『法華経の省察 行動の扉をひらく』春秋社 2011
『死もなく、怖れもなく』春秋社 2011
『微笑みを生きる <気づき>の瞑想と実践』春秋社 2011
『ブッダの<気づき>の瞑想』野草社 2011
『怒り ~心の炎の静め方』サンガ 2011
『法華経の省察』春秋社 2011
『蓮華の瞑想 こころとからだのヒーリング・レッスン』法蔵館 2011
『あなたに幸福が訪れる禅的生活のこころ
―澄んだ思考と穏やかな心から生まれる「真の力」の使い方』アスペクト 2009
『ティク・ナット・ハンの抱擁』理論社 2008
『小説 ブッダ いにしえの道、白い雲』春秋社 2008
『プレゼント モメント ワンダフル モメント』サンガ 2007
『あなたに平和が訪れる禅的生活のすすめ
―心が安らかになる「気づき」の呼吸法・歩行法・瞑想』アスペクト 2005
『禅への道―香しき椰子の葉よ』春秋社 2005
『禅への鍵』春秋社 2001
『仏の教え ビーイング・ピース ほほえみが人を生かす』中央公論文庫 1999
『生けるブッダ、生けるキリスト』春秋社 1996
『ウォーキング・メディテーション』渓声社(星雲社) 1995
『ティク・ナット・ハンの般若心経』壮神社 1995
『マインドフルの奇跡~今ここにほほえむ』壮神社 1995
『ラブ・イン・アクション』渓声社(星雲社) 1995